2012年6月5日火曜日

人生は登り坂(No43)

大々的に宣伝を打てる経済力がありませんので、月に一度新聞の生徒募集欄に4~5行の広告を載せるだけです。
大手の有名着物学院の母体は小物制作会社です。従って入学時には入学金と月謝にプラスして、オリジナルのアイディア製品の売上があります。それも安い金額ではありません。
私は職人ですから、職人気質としてはきものを着るのに、これを使わなければいけないというシステムは取れませんでした。
どんな道具を使っても、道具がやってくれることはありません。その道具を旨く使いこなせる腕がなければ、道具を使っても早くで着れるようにはならないし、また上手に着れるようにもなりません。
逆に腕さえあれば荷造りに使うビニールの紐を使って着付ても上手に着れますし、そう簡単に崩れないし、着ていて苦しいということもありません。
経営が安定してから年に一度舞台を借りて発表会をしていました。その中でそういうことを皆さんに見ていただくためにビニールの紐を使って着付けをして見てもらいました。また紐を一本も使わないで普通に着る着付けなども見ていただいたことがあります。
技能というものは腕さえあれば上手に出来るのですが、技能というものの真理を知らない人は、これを使えば簡単に楽に着れるなどと説明を受けますと「そうなんだ」と簡単に思い込んでしまうのです。無知からくる損失ですね。
私は30年ほど前に各家庭に出張して着付けをしてあげるという、出張着付けを始ました。
大々的に始めたのはもう30年も前のことですから、私が出張着付けのパイオニアだと自負しています。
各家庭に着付けに伺います。非常に高い確率で大手の各学院のオリジナル小物を所持されています。それはお稽古をしたことがあることを証明しています。
お稽古をした人が大勢いいますが、その大半がお稽古に行ったけれども「ヤッパリ着れないと」という人たちです。
何故そうなるのか。体で覚えるところまでお稽古していないからです。
技能と言うものは「習うよりも慣れろ」です。
体で覚えるところまでやっていないと直ぐに忘れるのです。
どんな道具を使ってもそれは同じで、道具に頼れば余計に忘れて出来なくなります。
それが道理ですから、私の学院では道具を使わないでお稽古をしていました。
そういうシステムですから一人入学してきても入学金3000円と月謝4000円の収入です。
そんな経営内容で、借金をしてまで派手に宣伝をしても、その経費の返済は恐らく無理だろと思っていましたので借金の申し込みもしないで細々と地道にやっていました。

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