2012年12月1日土曜日

エッセイ「人生探訪」仕事編No5

職場に配属されたときにその職場に見習工が一人いました。その人と話をしますと私の中学校の先輩です。その人はやくざの組に入っていたのですが、母親が真面目になって結婚をして孫の顔を見せてくれ。
孫の顔を見てから死にたいというので堅気になるために働いているということでした。
 神戸製鋼は職員は主に学校からの採用ですが、工員は中途採用していました。一年見習期間を終えた者が正社員になれる試験があります。見習の期間は給料も安いので入ってきても直ぐに辞めていく人が多いのです。
 その先輩と直ぐに仲良くなってよく遊びました。飲みに行きますと飲んだ勢いで若いですから喧嘩をしました。
先輩は自分から喧嘩を売ることはありませんが、喧嘩になれば元やくざですから絶対に引きません。
物凄いことになるときもあります。そういうことが会社に知れれば臨時工は直ぐに首になりますから、会社に分からないように庇って隠しました。私は人事部に呼ばれて説教をされました。普通なら首ですが何時も説教だけで終わっていました。養成工としてお金を掛けて教育していますので大目に見過ごしてくれていたのです。
ある時は裁判所に親同伴で呼ばれたことがあります。知り合いの悪餓鬼は少年院に送られた者もいます。
ところが私は仕事は真面目に行っていました。そして神戸製鋼所という良い会社に勤めているので、これが原因で会社を首になっては可哀想だからと厳重注意で許してもらったこともあります。
 親父が言うように辞めてしまっては惜しい会社であることは自分でも承知をしていましたが、私にとって良い会社というのは自分の描いている夢に繋がることであって、生活のためだけに働いている会社はよい会社とは思えなかったのです。
自分にはそういう気持ちがありましたので、何の惜しげも躊躇もなく辞表を提出しました。
そうすると会社は「余所の花は赤く見えるものだから三年間休職扱いにしておいてあげる」といってくれました。そんなにありがたいことを言って下さったのに若さは無知で愚かですから義理に背いて正式に退社してしまいました。

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