2012年12月29日土曜日

エッセイ「人生探訪」仕事編No30



 他の有名学院の母体は小物会社です。
物品を販売しなければ運営はしていけないことは確かですから、学院販売を反対するよりも、むしろ積極的に進めて行かなければ仕方がないという気持ちです。
ただ学院という名がついて人に指導する所では、合理的であるか否かを最優先しなければいけないと思います。それが人様から「先生」と呼ばれていることの責務ではないかと私は考えています。
 着付けという技能ですが、着付は「着ていて着崩れが少ない事」「着ていて楽である事」「綺麗な着装になっている事」「そして着付けが素早くできる事」これが最上であってそれ以上のものはありません。そういう着付が出来ればどういう手順で着て行ってもいいし、またどんな物を使っても間違いということがありませんが、各箇所にはここはこうすることがベストだという合理性というものがあります。
 例えば、着崩れが少ないという点を取り上げますと、従来通りの腰紐の着付けが一番よいのです。私は芸能界で衣裳の担当をして様々な着付けをしてきましたが、舞台や日舞などでは絶対に腰紐で着付けをします。激しい動きをしますので、腰紐でないと着崩れてしまうからです。
腰紐が着くずれを少なくするには一番なのですが、腰紐の着付けは苦しいという理由付けをして、大手のきもの学院では母体である小物会社のオリジナルのゴムベルトを入学時に買わせます。
奨める学院側としては、通常の着付けの場合はこれで十分に着崩れない。十分であればこちらのゴムベルトの方が腰紐よりも楽な着装ができるという理屈なんかもしれません。
着付けを知らない人はそのように説明をされれば「そうか」と思ってしまうかもしれませんが、着付けの熟達者である私から見れば、それは合理的なものでなく売らんがためのこじつけの理屈であると思います。

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