2013年2月3日日曜日

エッセイ「人生探訪」仕事編No63

淡路黒岩水仙郷


 私共の学院では、派手に宣伝もできませんので入ってくる人は少ないのですが、在籍している人は、「そんなに長い期間なにを習うことがあるの」と人から不審に思われるくらいに長年に渡って在籍してくれている人がほとんどです。
お稽古事は家元制度を採用していますので、私共の組織から出て他に行けば立場的には初心者扱いになってしまいます。
それでは長年に渡って学院を支えてくれた生徒までも裏切ることになりますので学院を割ることはできません。割れば私にも何人かは付いてきてくれたかもしれません。それをするにはパートナーも経営者であるというような余計なことを暴露しなければならなくなってしまいます。
 生徒は私が経営者で彼女は私のために懸命に尽くしてきている。そう思い込んでいるようですから、そういうことをばらせば彼女に対する同情が減少し彼女の立場が不利になります。それは彼女のためによくないし、彼女の立場が悪くなれば学院のためにも大きなマイナスになりますので、そこまでの争いは避けなければと思っていました。
 当然のことながら多少のいざこざがありましたが、彼女なら私がいなくても学院を旨く経営していってくれるだろう。私が興した学院ですから学院に対する未練は大きいです。またこれで無職になってしまいますので、先の生活を考えれば不安でしたが男らしく自分が退くことを選択しました。
辞めてから私が生徒を裏切って女に走ったように言っているようです。確かに長年苦楽を共にしてくれたパートナーを裏切ったことになります。
確かに私が悪いのですが、彼女には夫がいて家庭もあります。また自分の経営でもありますので、私に尽くしたというよりも自身の励みでもあったわけです。様々な点から争い方は色々あって、自分の興した学院を自ら退くこともなかったのですが、ただ生徒に迷惑は掛けたくなかった。その一心で退いたのです。
知り合いには「お前は阿保か」と言われました。確かに私は阿保ですね。

0 件のコメント:

コメントを投稿