2014年9月2日火曜日

幸せさがし-49

枚方宿


一回目の展示会は大成功でした。その当時は貧しくて車を持っていませんでしたので、大きな風呂敷に返品する反物と売れた分を分けて包んで、一回では持てませんので何回かに分散させて阪急で室町まで運びました。
当時はまだ呉服業界も元気があった時代です。大手の呉服屋が仕立屋をおさえていますので、なかなか仕立屋を探しても見つかりません。折角売れたのに仕立をしなければお客様に渡せません。
私は着物の寸法直しは出来ました。それは地方巡業に行きますと、現地で衣装合わせをすることがあります。台本を読んで、役者の寸法は分っていますので、役に応じてこれで行ってもらおうと組み合わせをして準備をして持って行くのですが、どうしても衣裳を代えてくれという、本人や演出家から注文が出る時があります。予備を持って行っていますので、それを使用するのですが寸法直しをしなければいけません。そんな時は自分でしていましたので着物のことは分っていましたし、運針もできましたので、売れた分は私が縫っていました。
昭和の50年代です。あるお客様が80万円の訪問着を買って下さいました。一か月先に結婚式があるのでそれまでに仕立てが間に合えば買うということです。
そんな高級な訪問着を縫う自信は勿論ありません。それでもそれ一点で一般サラリーマンの一か月分の利益があるのです。「はい間に合わせます」と約束をして買っていただきました。慎重に丁寧に根性で縫い上げました。精魂込めて縫いました。やれば出来るのです。どうしてもやらなければと強い決意で臨めば、ほとんどのことは成就するのです。

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